オフィスの移転・閉鎖で出る廃棄物の処分と費用
移転や閉鎖で出る机・書庫・パソコン・蛍光灯などは、物によって産業廃棄物と事業系一般廃棄物に分かれ、空調や家庭用家電は別の法律の手順があります。分け方、頼む順番、費用の想定例、原状回復工事との境目をまとめました。
想定している読者: 移転・閉鎖を担当する総務・管理部門の方、小規模事務所の経営者
出る物と区分
同じ場所から出る物でも、産業廃棄物、事業系一般廃棄物、別の法律の仕組みで扱う物に分かれます。区分が違えば、依頼できる業者の許可も、必要な書類も変わります。
- スチールの机・椅子・書庫・ロッカー 産業廃棄物
金属くずです。樹脂や布張りの部分がある物は、廃プラスチック類などとの混合物として扱われます。
金属だけの書庫・ロッカーは、量がまとまると処分費が0円になったり、買取になったりすることがあります。
詳しく見る - 木製の机・棚・木製の間仕切り 業種・状態で変わる
木くずは業種限定の品目です。多くの事務所では事業系一般廃棄物になります。
建設業の工事(工作物の新築・改築・除去)で出た物、木材・木製品製造業や物品賃貸業(リース・レンタル)から出る物は産業廃棄物です。
詳しく見る - 書類・段ボール・機密文書 事業系一般廃棄物
紙くずは業種限定の品目で、多くの事務所から出る物は事業系一般廃棄物です。
建設業の工事(工作物の新築・改築・除去)で出た物と、パルプ・紙・紙加工品の製造業、新聞巻取紙を使う新聞業、印刷出版を行う出版業、製本業、印刷物加工業から出る紙くずは産業廃棄物です。機密文書は、溶解や裁断で処理でき、その証明書を出せる業者かどうかを確認してから頼んでください。
詳しく見る - パソコン・複合機・サーバー 産業廃棄物
廃棄物として出す場合は、金属くず・廃プラスチック類などの混合物です。
リース品は、まず返却します。メーカーによる回収や買取という方法もあります。どの出し方でも、データが消去されたことを確認してください。
詳しく見る - 蛍光灯・水銀灯 産業廃棄物
水銀使用製品産業廃棄物です。割らずに、ほかの物と分けて出します。
詳しく見る - UPS・非常用電源のバッテリー 産業廃棄物
産業廃棄物です。電池の種類で費用が大きく変わり、鉛蓄電池は買取になる例があります。
鉛蓄電池を廃棄物として出す場合、電解液は特別管理産業廃棄物(廃酸)に当たるため、特別管理の許可を持つ業者に頼みます。
詳しく見る - 業務用エアコン・業務用冷蔵庫 別の仕組み
冷媒にフロン類を使う業務用の機器は、フロン排出抑制法の第一種特定製品です。銘板で冷媒の種類を確認し、フロン類を回収してから本体を産業廃棄物として出します。
詳しく見る - 家庭用のエアコン・テレビ・冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機・衣類乾燥機 別の仕組み
事務所で使っていても、家庭用の機種なら家電リサイクル法の対象です。
詳しく見る - 消火器 別の仕組み
産業廃棄物ですが、メーカーのリサイクルの仕組み(リサイクルシール)で出せます。
詳しく見る - 原状回復工事で外す床・壁・天井・間仕切り 工事の元請業者が処理
内装工事を頼んだ場合、工事で出る廃棄物は工事の元請業者が排出事業者として処理します。
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区分は、廃棄物処理法とその施行令で定める品目によります。業種が限られる品目や混ざった物の扱いは、自治体によって運用が違うことがあります。事業所のある自治体に確認してください。
費用の考え方と想定例
費用は大きく「収集運搬費(車両1台ごと)」と「処分費(品目の単価×量)」に分かれます。ここでは、品目ページに載せている処分単価の幅に仮の量を掛けた想定例を示します。実際の事例ではありません。
- 2t車: 15,000〜30,000円
関東の処理業者が公開している料金表から、車種ごとの料金(多くは「○円〜」と書かれた最低料金)の幅をまとめたものです。距離や積込みにかかる時間、階段での作業の有無によっては、これより高くなることがあります。
想定例1: 小規模な事務所を閉じる(什器・パソコン・蛍光灯)
- スチールの机・椅子・書庫など 約5 m³ オフィス家具・店舗什器 7,900〜15,000円/m³ × 5m³ 39,500〜75,000円
- パソコン・プリンター10台 パソコン・OA機器 500〜3,000円/台 × 10台 5,000〜30,000円
- 蛍光灯(直管)30本 蛍光灯・水銀使用製品 60〜300円/本 × 30本 1,800〜9,000円
- 収集運搬費(2t車・2台) 15,000〜30,000円/台 × 2台 30,000〜60,000円
- 処分費
- 46,300〜114,000円
- 収集運搬費
- 30,000〜60,000円
- 合計の目安
- 76,300〜174,000円
木製の家具や書類などの事業系一般廃棄物は、料金の決まり方が市町村や業者で違うため、この例には入れていません。パソコンが買取になれば、その分の処分費はかかりません。
想定例2: 移転で金属の書庫・ロッカーだけを出す
- スチールの書庫・ロッカー 約600 kg 金属くず 0〜40円/kg × 600kg 0〜24,000円
- 収集運搬費(2t車・1台) 15,000〜30,000円/台 × 1台 15,000〜30,000円
- 処分費
- 0〜24,000円
- 収集運搬費
- 15,000〜30,000円
- 合計の目安
- 15,000〜54,000円
金属だけにそろえると、処分費が0円になったり、買取になったりすることもあります。ただし、運搬費はかかります。
量と車両の台数は仮の数字です。搬出の作業費・養生費、マニフェストの費用、産業廃棄物税、消費税は含めていません。単価の出典は、各品目のページに載せています。
移転・閉鎖の進め方
- 持っていく物・売る物・返す物・捨てる物に分けます。 リース・レンタルの家具や複合機は契約先に返します。年式の新しい家具やOA機器は、捨てる前に買取の見積りを取ります。
- 捨てる物を区分ごとに分けます。 上の一覧のとおり、産業廃棄物・事業系一般廃棄物・別の仕組みで出す物に分かれます。同じ机でも、スチールと木製では区分が違います。
- 区分ごとに頼み先を決めて、見積りを取ります。 産業廃棄物の収集運搬は、積む場所と下ろす場所の両方の都道府県で収集運搬業の許可を持つ業者に、処分は処分施設のある都道府県などで処分業の許可を持つ業者に頼みます。事業系一般廃棄物は、市町村の許可を持つ業者に頼むか、市町村が案内する出し方に従います。
- 産業廃棄物は書面で契約し、マニフェストを交付します。 収集運搬業者・処分業者のそれぞれと契約を結び、引き渡すときにマニフェストを交付します。マニフェストは産業廃棄物の制度です。事業系一般廃棄物は、市町村のルールに従って出します。
- 原状回復工事の前に、残した物を出し切ります。 工事の業者に「ついでに」頼むと、許可の範囲を外れることがあります(下の「気をつける法令」を参照)。
- 書類を5年保存します。 委託契約書は契約が終わった日から5年、マニフェストの写しは5年保存します。移転先や本社で、誰が保管するかを決めておきましょう。
ビルによっては、テナントの一般廃棄物の回収を管理会社がまとめて契約していることがあります。大量に出る場合の扱いは、管理会社にも確認してください。
気をつける法令
残置物の処理責任
退去や解体のときに建物に残した家具・什器などは「残置物」と呼ばれ、処理の責任は残した所有者などにあります。環境省は2018年6月22日の通知で、残置物は解体工事で出る廃棄物(元請業者の責任)とは別のもので、解体の前に所有者などが自ら処理するものだと示しています。リフォームなど解体以外の工事でも同じです。
同じ通知では、残置物が一般廃棄物に当たる場合、産業廃棄物の許可だけでは処理を引き受けられないとされています。木製の家具や書類が残っていると、産廃の業者だけでは運べないことがあります。
原状回復工事で出る廃棄物の扱い
床・壁・天井や間仕切りを外す内装工事を頼んだ場合、工事で出る廃棄物は、発注者から直接工事を請け負った元請業者が排出事業者として処理します。下請業者が作業しても同じです(廃棄物処理法21条の3)。
テナントが自分で出す什器・備品と、工事で出る物を、見積りと契約の段階で分けておくと、費用の二重払いや出し忘れを防げます。
原状回復でビルの一部を壊したり改修したりするときは、規模にかかわらず、元請業者が工事の前に石綿(アスベスト)の有無を調べ、その結果を発注者に書面で説明します(大気汚染防止法18条の15)。発注者には、調査の費用を適正に負担するなどして協力することが求められます。都道府県などへの報告が要る工事の規模と、除去した石綿の扱いは解体・リフォーム工事のページにまとめています。
業務用空調・冷蔵庫のフロン回収
業務用のエアコンや冷蔵庫を捨てるときは、機器の管理者が、フロン類を第一種フロン類充塡回収業者に引き渡す義務があります(フロン排出抑制法41条)。法律でいう「管理者」とは、機器の所有者など、使用を管理する責任を持つ人のことです。ビルに備え付けの空調はテナントの物ではないこともあります。外す前に、誰が管理者に当たるかを貸主と確認してください。
回収の手順と書類(行程管理票・引取証明書)は業務用エアコン・冷凍冷蔵機器のページにまとめています。
家庭用家電の出し方
家庭用のエアコン・テレビ・冷蔵庫・冷凍庫・洗濯機・衣類乾燥機は、事務所の休憩室などで使っていた物でも、家電リサイクル法の対象です(神奈川県の案内)。出し方は、購入した店や買い替える店に引取りを頼む、自分で指定引取場所に持ち込む、産業廃棄物の収集運搬業者に指定引取場所まで運んでもらう、のいずれかです。リサイクル料金はどの出し方でもかかります。産業廃棄物の収集運搬業者に指定引取場所までの運搬を頼む場合はマニフェストが要りますが、家電販売店やその委託を受けた業者に渡す場合は要りません。
蛍光灯・パソコン・消火器
- 蛍光灯は、契約書とマニフェストに水銀使用製品産業廃棄物が含まれることを記載します(蛍光灯・水銀使用製品)。
- パソコンは、どの出し方でも、データの消去と、その証明を確認します(パソコン・OA機器)。
- 消火器は、リサイクルの仕組みに出せばマニフェストは要りません(消火器)。
費用を抑えるには
- 売れる物を先に分けます。 状態のよい家具やOA機器は、処分ではなく買取になることがあります。ただし、買取といいながら処分費を別に取る形(逆有償)は、廃棄物として扱われることがあります。
- 金属だけの物を分けます。 スチールの書庫・ロッカーは、金属くずとしてそろえると処分費が下がりやすくなります(分別すると処分費はどれくらい下がるか)。
- 搬出の回数を減らします。 運搬費は車両1台・1回ごとにかかるため、出す日を分けるほど増えます。
- 搬出の条件を先に伝えます。 階数、エレベーターの有無と大きさ、車両を停める場所、作業できる時間帯によって、作業費が変わります。後から分かると、追加費用になりやすいので注意してください。
出典
関連する品目・疑問・用語
品目別の費用
よくある疑問
- 事業系一般廃棄物と産業廃棄物は何が違うのですか?
- リフォームや解体で出た産廃の処分費は誰が払うのですか?
- 業者の許可証はどこを見ればいいですか?産廃情報ネットの「さんぱいくん」の使い方は?
- 産業廃棄物の委託契約書は必要ですか?何を書けばいいですか?
- マニフェストはどう書いて、何年保存すればいいですか?
- 回収まで、産業廃棄物を敷地内でどう保管すればいいですか?
- 分別すると処分費はどれくらい下がりますか?
- 少量でも回収を頼めますか?2t車1台だといくらくらいですか?
- 産業廃棄物の処分費はどの勘定科目で処理すればいいですか?
用語
ほかの場面
- 店舗の閉店・改装で出る廃棄物の処分と費用
- 解体・リフォーム工事で出る廃棄物の処分と費用(元請業者・工務店向け)
- 工場の産業廃棄物の定期回収と、処理業者の見直し
- クリニック・医療機関の開業と閉院で出る廃棄物の処分と費用
- 農業や小さな事業所から出る、少量の産業廃棄物の出し方と費用
見積りを依頼するときは
内装・原状回復工事で出る物は、工事の元請業者が処理します。ご依頼の際は、事務所に残した什器・備品だけをご記入ください。
出る物が複数あるときは、品目で「複数品目・わからない」を選んでください。補足欄には、出る物の一覧とおおよその量、搬出の条件(階数・エレベーターの有無・車両を停める場所)をお書きください。業者から連絡があったときにすぐ送れるよう写真を用意しておくと、話が早く進みます。処理そのものは当サイトでは請け負わず、許可を持つ処理業者へおつなぎします。
無料で見積りを依頼このページの費用は目安です。法令の記述は、条文と環境省・自治体の公開情報をもとにしています。個別のケースの判断は、所管の自治体と委託先の業者に確認してください。